グランプリ出版 ISBN: 4876871566
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エンジンの構造や作動原理、最新のメカニズムなどを知りたくなって書店へ行けば、たくさんの本がならんでいる。 入門書、ニューモデルのメカニズム比較、レーシングエンジンの解説、学術論文や設計技術者向けの実践的なものまで、さまざまなレベルと視点の書籍がある。 モーターサイクルという視点に立った場合、そのエンジンに限定した内容のものはさほど多くないが、ふんだんにあるクルマ関係のそれが十分に参考になる。 ところが、それらの書籍は、まずほとんど4ストロークエンジンに関するものなのだ。 2ストロークエンジンについてとなると、少なくとも僕たち一般人が読んで面白いとか、わかりやすいものは、皆無に等しい。 せいぜい、1冊の本の中のわずかなスペースで、簡単に触れられている程度だ。 これは困った、と僕は思った。 モーターサイクルでは、2ストロークモデルがたくさん存在している。 自分がまたがる相手の正体を、ライダーの欲求として知りたかった。 それに応える本がないなら、自分で作るしかない。 これが本書を執筆することになった、そもそものキッカケである。 既存の書籍がないのだから、参考書を集めただけでは書けない。 専門家に教えていただき、現実のエンジンをひねくりまわしながら勉強していくのが唯一の方法だ。 そして、さまざまな機種のエンジンにはそれぞれ特有のメカニズムがあるだろうが、それらを広く浅く見てまわるより、特定のエンジンに絞って探求してみたほうが、かえって2ストロークの本質に近寄れるのではないか。 その機種は、レーシングマシンがいい。 単純明快に速さを追求してるだけあって、答を見つけやすいはずだ。どうせなら世界最強最速がいい……。 こんな企みを抱え、世界GPロードレースを闘うホンダのワークスマシン、NSR500のエンジンに関する取材を申込んだのが1993年4月だった。 デイパックに資料と器材を突っ込み、バイクでHRC教室へ通う日々が始まる。 取材では、最先端のマシンを開発している技術者諸氏に、まず「2ストロークとは、そもそも、どーなってるのか」という質問を浴びせる。 最初から最後まで、基点はそこに置いた。 2ストロークは新気をまずクランク室に吸い込んで……という程度の原理くらい知ってるつもりだったが、あえてそこから始めた。 これがよかった。 知ってるつもり、僕たちレベルでの常識が、いかにイイカゲンか、次々に露呈されていった。 まったくのトーシローを相手に、その道の敏腕プロフェッショナル諸氏がよってたかっての個人授業である。 贅沢な話だ。 理解できるまで何度も質問を繰り返し、原稿を書いて読んでいただいてから間違いなどを指摘していただき、ということを続けた。 これが、ほぼ2年間。 僕のあまりのシツコさに、敏腕諸氏は当初呆れたものの、やがてはヤケッパチ気味に「わかるまで付き合ってやろう」の状態に陥ってしまった。 おかけした迷惑は、半端じゃない。 教材はNSR500である。 世界の頂点に立つGPマシンの秘密を暴露することが主題ではなかったものの、未公開データをふんだんに教えていただいた。 結果、僕も何度かの試乗で驚愕した超高性能を生み出す、その仕掛けをお伝えできることになった。 ワークスマシンとは何かも本書から見えるはずだ。 それでも、NSRの構造を各種ストリートバイクなどと対比しながら、2ストロークの基本を探求するスタンスは守った。 ストリートバイクは「レベルが低い」ということはなく「技術の組み立て方が違う」だけだ。 また、さほどメカニズムに詳しくなくても読み進められるように心掛けた。 もっとベーシックな構造や用語を知りたい方には、僕と村井 真氏の共著である「図解バイクエンジン入門」(グランプリ出版)が参考になるのではないか。 今回の取材と執筆を通して、僕は2ストロークエンジンならではの面白さに触れることができた。 この面白さを、今このページを開いている、あなたにも知ってほしい。 そして明日の2ストロークエンジンへの夢を抱いてほしい。 1995年2月 つじ・つかさ
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