目玉は、この日が実車日本初公開となるスプリントSTとスピードトリプルの新型2車だ。スプリントSTに関してはリリースを『他人の褌』に掲載しているが、当日は残念ながらまだナンバー取得ができておらず、試乗はできなかった。とはいえ、写真で見るだけではなく実車が目の前にあるというのは、やはりリアルである。やや装いを改めたデイトナ650やスピードフォーも、展示のみとはいえ実車が用意された。そしてロケットスリー/スラックストン900/ボンネビルT100の3台はナンバー付きで、乗りたい方はお好きにどうぞ、と路肩に停めてあった。 これ幸い。僕は乗りこぼしていたロケットスリーにまたがり、お台場あたりを軽く流してみることにした。
しかしながら、実際には思ったほど手強くはなかった。クラッチはナナハンなみに軽いし、セルボタンの一押しでさらりと始動したエンジンは素直。スルスルと走り出せたのである。操縦性も、その重量と超超超極太のリヤタイヤではヒラリスイスイとはいくはずもないが、一般的な大型アメリカンより少しばかりクセが強い、といった程度でしかない。高速時の直進安定性とか、旋回特性とか、そういうものも上等とは言えないけれど、まあ普通とできるレベルだ。 おそらく僕は無意識のうちに、V8の5000ccエンジンを搭載したボスホスなどの類の走りを予感していたのであろう。それほどゲテモノではなかった。でも、この手のバイクがまるで素直にススーッと走ったのでは、まったく意味がない。異常なバイクに乗る意気込みの期待を裏切るようでは困る。そのあたり、ホンダ製品などとは違って異常感覚は見ためどおり十分にあるのだが、手に余るほどゲテモノでもなく、一般交通の流れに乗って街を泳ぐのにさしたる不都合もない、そんな適度な異常さのバランスに優れていると思った。
そういうバケモノ的な能力を備えつつも、僕が感心したのは「ちゃんとトライアンフしているエンジン」であることだった。上質で柔らかみのある人間くさい回転フィールは、デイトナとかスプリントSTとかの並列3気筒エンジンと血がつながっている。3気筒エンジンはBMWにもあったが、あちらは精緻で硬質といった印象であり、やはりイギリス人が作ると、ドイツ人とは違うんだなぁ、という感じである。
ちなみに、ボンネビルT100の乗り味をもう少し説明しておけば、カワサキW650のようなドコドコ指向ではない。ブォーンと滑らかに回り、柔らかく肌に優しい鼓動感が心地よい。通常のボンネビルより排気量が大きい分だけ低中速のトルクがあり、全域で十分以上の加速力が得られ、トップエンドの伸びも意外といい。まあ、飛ばし屋のUK人種たちは、クラシック指向とはいえこのくらいは走らないと許さないのだろう。
開催場所となったのはMotorist Cafe SUPER RACERというカフェである。左のリンクを開いて場所を確認し一度行ってみれば分かるが、海岸通りを外れた裏道の交差点にある。小さくて豪華でもないけれど、不思議とヨーロッパの臭いがして、落ち着いていて居心地のいい店だ。 センスのいい店ではあるが、しかし日本の二輪業界の一般常識から見れば、メーカー(及びインポーター)がプレスプレゼンテーションを行うには、あまりに狭すぎ、立派さも不足している。普通は、どこかのホテルの宴会場などを借りて行うものである。おそらく各種準備の都合やコスト、あるいは試乗車を会場の脇に準備したいといった要素からこのスタイルとなったのであろう……と想像するが、これがよかった!
じつに和める雰囲気であり、あるいは濃い内容の話もできる。実車を前に置いて担当者氏に質問することも可能で、プレゼンはOHPとパソコンを使っての立派なもので内容に不足はない。 業界話で申し訳ないが、こんなに暖かみがあり実質の内容がシッカリしたプレスミーティングはめったにないのだ。日本的ではないかもしれないが、その欧州の臭いのするミーティングは、ものすごく魅力的であった。 日本のメーカーも、費用をかける以前に、こうしたプレスミーティングを数多く開催してもらいたいものである。我々が一般ユーザーへより内容のある報道をするためにも、そして現実として普段ほとんどバイクに乗らない人間が多い雑誌社の編集関係者諸氏に真の単車乗りの心を身に付けてもらうためにも。 そんなことを思った一日であった。 |